どのように遺産分割協議書をまとめれば

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被相続人が残したい財産を相続人同士で配分するときに作成される書類を「遺産分割協議書」といいます。

最近でこそ少なくなってきましたが、以前は相続人の数が二桁になるような場合も見受けられました。

相続人が十数名ともなると、相続財産の配分の手間もかかります。

現在では、被相続人と相続人が全員同居しているということは稀です。

結婚や就職で親元を離れると、盆や正月というような特別の日にしか家族が集まらないというようなことも珍しくはないのです。

■回覧板を回すように

遺産分割協議書の作成によって、遺産が誰のものになるかが決定されます。

一度決めてしまうと、余程のことがない限り、それを覆すことはできなくなるため慎重に作成しなければなりません。

誰にどの財産を配分するかを決める時、相続人である親族間で話し合いを持つのが一般的です。しかしながら、相続人の全員が一堂に会することができるとは限りません。

長男は海外に赴任中、長女は地方に嫁いでいるなど、被相続人の葬儀の後に、遺産分割協議書を作るために全員が集まれる保証はありません。

そこで、相続人の一人が代表して、遺産分割協議書のたたき台を作成し、当事者全員に送り、問題なければ実印を押印してもらうということが実務的です。

しかし、一枚の遺産分割協議書に相続人の全員の実印を押印するためには、町内会の回覧板を回すように、相続人間を往ったり来たりさせることとなります。

海外に住んでいる相続人に遺産分割協議書を送り、それが返送されるまで次の手続きがとれないとなると、途方もない時間を要することにもなります。

そこで実務的には、同一内容の遺産分割協議書を複数作成し、相続人各人がそれぞれ実印を押印することで、書類の回覧をしなくてもよい方法をとることになります。

なお、海外に在住する相続人の場合、外国には印鑑証明という制度がないため、それに代わる方法として、日本の在外公館(大使館・領事館)でサイン証明を出してもらうことで対応します。

■相続人に未成年者がいる

相続人に未成年者がいる場合があります。一般的には、相続となると被相続人の子息も成人であることのほうが多いのですが、相続人が他界しているような場合に、その子供、すなわち孫が相続人になることがあります(代襲相続)。

この代襲相続の場合、死亡していない親が親権者として法定代理人となり、遺産分割協議書に署名捺印すればよいのです。

しかし、代襲相続のケースとは別に、仮に亡くなった人が夫でその子が未成年である場合には、親権者である妻も相続人であり、同じく相続人である子の代理人になることは、子と母の利害が対立するために認められません。

そのため、未成年者が相続人の場合、親権者が家庭裁判所に未成年の子のために特別代理人の選任を請求しなければなりません。

従って、相続人に未成年者がいる場合は、相続人以外の特別代理人になってもらえる人を選び、家庭裁判所に認めてもらう手続きをとらなければならないのです。

特別代理人を立てない遺産分割協議は無効です。

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