兄弟すべて平等に扱う必要があるのか

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自分の子供はどの子も可愛いものです。しかし、子供の能力や性格はそれぞれ異なっているため、分け隔てなく接してきたつもりでも、長い年月の間に親の愛情に差が出てしまうことは仕方のないことです。

自分の体が動きにくくなってくると、自分の老後の面倒を誰が見てくれるのかという、現実的な不安が生まれてくるため、将来の相続についても、少しは考える必要に迫られます。

特定の子供に厚く

以前にもお話ししましたが、わが国の法律では、相続における財産の配分について、法定相続分が決められており、相続人が配偶者と子供二人というケースでは、配偶者が二分の一、子供がそれぞれ四分の一ずつとなります。

もちろん、それぞれの家族ごとに特殊な事情もありますから、それぞれのケースでかなり複雑な配分計算をしなければならないこともあります。

この法定相続分というのは、親の思いに関係なく決められているため、たとえば、自分の面倒を見てくれている長男に、全財産をあげたいと思っても、思うようにはいきません。

そこで、遺言書を書いて、長男だけ手厚く相続させたい、と思っても、ここでもわが国の法律は、遺留分という、相続人に最低限の相続できる権利を与えています。

そのため、いかに遺言書で意思表示しようとも、その遺留分まで侵害することはできないのです。

しかし、現実問題として、老後の面倒をみてもらう子とそうでない子で、相続に差をつけるとなると、少し工夫が必要になってきます。

遺留分を生前に放棄

仮に、家族が話し合って、長男は親の面倒をみるから、学費が沢山かかった次男には財産を残さないというようなことを決めたとしましょう。

しかし、生前にいくら話し合って決めたとしても、現実に相続が起こってしまうと、そんな取り決めは、反故にされる可能性があります。

そこで、親は思うとおりの相続をさせたいと願い、遺言書を書くということになるのですが、いかに遺言書があろうとも、相続人の遺留分は侵害できません。

たとえば、分割することが難しい家屋のような財産を長男に与えようとしても、親の死後、次男から遺留分を主張されると、結局親の意思は通らなくなってしまいます。

このことは、親がいなくなって子供たちだけで話し合うことになるから起こるのであって、親が健在のうちに、子供たちと取り決めができれば、後々に問題を繰り越さなくてもいいはずです。

この問題を解決する方法として、わが国には「遺留分の事前放棄」という制度があります。この制度を使えば、遺留分を持つ相続人が、家庭裁判所の許可を得て、自分の持つ相続分に対する遺留分を放棄することが可能です。

この制度を使えば、親の遺言書に従った円満な相続を親の健在なうちに完了することができるのです。

もちろん、遺留分を放棄するかしないかは、相続人の判断ですから、強要はできません。しかし、親が亡くなったあとでは調整が困難なことでも、親の目が黒いうちであれば、相続人を納得させることは可能かも知れません。

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