代わりに何を譲るのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

お父さんが亡くなり、残された財産を家族に配分する場合、そもそも何を配分するかという問題に直面します。

一生かかって家族に残してくれた財産を皆で仲良く分けて、お父さんに感謝したいものですが、財産があればこそ生じる問題もあるものです。

何を配分するの?

一般的には、相続財産として配分対象となるものは、故人が生前に所有した預貯金、不動産、株券などの価値ある財産です。

生活用の動産や趣味で集めた骨とう品なども相続財産には違いありませんが、無価値なものについては遺産分割の対象にはなりません。

一般家庭で多く見受けられる相続で、配分対象となる財産を見てみると、最も価値あるものとして残されるものが不動産で、それに金融機関の預貯金と生命保険金というところです。

まず、「相続問題は不動産問題」といわれるほど、相続財産に占める不動産の割合が高いのが一般的です。

被相続人が自分で購入したか、先代から引き継いだかの違いはあっても、相続財産である不動産は、評価として数千万円になることもあり、どのように配分するかは相続財産の公平な配分を阻害する要因となることが多いのです。

次に預貯金ですが、一般家庭で数千万単位のお金を保有しているケースはそう多くはありませんし、預貯金は簡単に配分ができるために配分の公平を期すことはさして難しくはありません。

残された預貯金は多くなくても、家族の生活のためにかけた生命保険については、通常、家族の誰かを受取人にしているため、保険金が支払われると、それが多額であっても、相続財産として配分の対象とはなりません。

生命保険金は指定された受取人の固有の財産であるため、そもそも配分の対象にはならないのです。

ただ、受取人を相続人とするというような書き方がされていると、その保険金は相続人全員の相続財産となり、やはり配分が必要になってきます。

代わりに何かを

不動産が相続財産の中で圧倒的な存在感があるような場合に、法定相続割合どおりに遺産を分割しようとすると、どうしても不動産を共有するような分割方法しかなくなってしまいます。

しかし、分割の段階ではそれでよくても、その不動産に住む相続人とそうでない相続人がいる場合、そこに住まない相続人にとっては、遺産を分割してもらっても実感がわきません。

相続した段階では何の問題も生じなくても、共有財産というものは、次の世代になると、分割当時と家庭の事情が変わるため、やはり共有の解消をしたくなる場合も生じます。

そのような将来の不安を解消するためには、相続の段階で、相続人のうちの一人の単独名義になるように、単独名義にする代わりに、その家を引き継いだ人の固有の財産を、他の相続人に提供するということで、解決することが現実的です。

また、相続人の財産を単独名義にする代わりに、被相続人が残した住宅ローンのような債務がある場合には、本来相続人全員で負担するところを、住宅を相続した人がそのローンを引き受けることで対処することもできるのです。

関連記事