複雑な親族関係に複雑な相続

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちは一生のうちで、親族の相続に関わりを持つ頻度は多くはありません。したがって、相続に対する経験則がないために、抜き差しならない問題に直面することもあり得るのです。

とくに、養子や非嫡出子など、解決を先送りしてきた問題が顕在化し、その後の処理に多大の労力を要する羽目になりかねません。

■非嫡出子も相続可能か?

男女の関係は本人同士の問題ではありますが、ことが相続となると、財産の配分問題で考慮しなければならないことが起こりえます。

正式な婚姻関係のない男女間で生まれた子を非嫡出子といい、出生届を出せば、母親の戸籍に入籍し、母親の姓を名乗ります。

しかし、父親が「認知」をして初めて、父親からの財産の相続を受けることに注意する必要があります。

そのため、非嫡出子がいるかどうかも含め、亡くなられた方の戸籍謄本を出生まで遡らなければ、相続人が判らないということが時として起こるのです。

蓋を開けてみたら認知していた子がいた。実務的にはこのようなケースはゼロではありません。

■再婚相手の連れ子

妻に先立たれ、夫が後妻と再婚ということは珍しいことではありません。男のやもめ暮らしは寂しいであろうことは想像できます。

ところで、熟年同士の再婚で、後妻に連れ子がいる場合、注意が必要です。子連れで再婚した場合、配偶者は自動的に夫や妻の相続人になりますが、連れ子については当然に相続人となるわけではありません。

再婚の夫婦両方に子供がいるような場合、両方の子供に両親の相続権を持たせるには、両方の子供たちが夫婦それぞれの養子となるよう、養子縁組をする必要があります。

連れ子の養子縁組をしなかったばかりに、継父が死亡した時点で、継父の実子は相続権を持ち、一緒に暮らす連れ子には相続権がないということにもなりかねません。

養子縁組

子供のいない夫婦が、兄弟等から養子をもらうということがあります。養子は法律上、実子と同じく養親に対する相続権を持ちます。

したがって、夫婦に子供がおらず、養子を受け入れた場合、その養子が相続人となり、兄弟姉妹等は相続人ではなくなります。

養子縁組の手続きは、婚姻の手続きと同様、養子縁組の届け出を市町村に提出するだけですが、将来の相続に大きな影響を及ぼすため、慎重な対応が求められます。

また、養子縁組をしたとしても、その養子は、実の両親との関係が断ち切られたわけではないため、養子となった子は、養父だけでなく、依然として実の両親の相続人でもあることは注意が必要です。

なお、一時、相続税対策として、孫を祖父の養子とし、結果として親子が兄弟となるというような妙な対策がはやった時期があります。親子で兄弟というのもおかしなものです。

関連記事