無い袖は振れません、それは税金も同じ

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税は誰が払うものなのでしょうか。常識的に考えると、所得を得た人、財産をもらった人ということになります。しかし、税の世界はそう簡単ではありません。所得を得たつもりがなくても課税され、所得を得たのに課税されないということは起こりうるのです。

■財産分与で夫に税金

質問者 妻と離婚し、財産分与のために、住んでいる自宅を妻に譲りました。このような場合にも税金がかかるのですか。

回答者 年間の離婚件数が、我が国では25万組程度になっているようですが、離婚で問題になるのが財産をどう分けるのかという点です。

夫名義で保有する預貯金や株式、不動産など、離婚の協議において、その半分が妻のものであるとして財産分与を行ったとき、ここで夫に税負担が生じることがあります。

特に自宅を妻に分与するような場合が危険です。なぜかというと、不動産を財産分与した場合、夫はその不動産を時価相当額で妻に譲渡したことになってしまうからです。

先代から引き継いだ不動産の相場が5000万円として、これを全て財産分与すると、夫に5000万円の譲渡収入が発生するのです。

つまり、夫は財産を分与した上に、この5000万円の譲渡収入に対する税金の負担もしなければならなくなる可能性が生じます。

特に、先代から引き継いだ不動産であると、原価はかなり低いことが多く、譲渡益も多額になるため、税金負担は1000万円近くになる可能性があるのです。

財産を分与したうえに税負担とは踏んだり蹴ったりであって、庶民感覚では理解しがたいものです。もし、税負担のことを知っていれば、財産分与の方法も変えることが可能なのですが、分与してしまってからだと、後の祭りということです。

■資力喪失・保証履行

質問者 20年前に親から相続した土地の上に賃貸ビルを建てましたが、入居者が入らず、借り入れの返済ができないため、このビルを売却しようと思います。

売却代金は全て借金の返済で消えますが、税金はどうなりますか。

回答者 金融機関に担保提供していた不動産を売却せざる得なくなるということは、事業をしている人ばかりではなく、不動産賃貸業を行っている人や、親戚の借金のために不動産を提供した人の場合にも起こりえます。

不動産の売却代金を金融機関への借入金の返済に充てた場合、手元にほとんどお金が残っていないとしても、残念ながら、税負担は避けられません。

これは、税の考え方として、不動産の売却益に対する課税と借金の返済は別の話であると割り切っているからです。

もちろん、それでは、ない袖を振ることになるため、一定の条件が整えば税金を払わなくてもよい場合があります。

つまり、不動産の売却後他に資産や所得がない人の場合、税金を負担する力がないため、資力喪失者として税負担は免除されます。

また、連帯保証債務の履行のために不動産を売却した時も、無税にできる可能性があります。

無税になるための要件は少し難しいので、専門家と相談してみてください。

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