財産を分ける苦労

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■財産分けには印鑑が必要

父親が残した財産を子供が相続する場合、たんす預金であれば、その場で山分けをすることもできます。また、残された財産が書画や骨董の類であれば、欲しい人に分けてあげればよいので、面倒な手続きは特に必要がありません。

ところが、預貯金、株式、不動産、電話加入権、車のように、その所有者から名義を変更する必要がある場合には、元の所有者の登録印や実印と印鑑証明書が必要になります。

相続の場合、元の所有者は死亡しているのですから、それらの財産の帰属を確定させるには、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になります。

しかし、名義変更の書類に相続人全員の相続人全員の実印の押印と印鑑証明書を入手するというのは、実は容易なことではありません。

最近では、相続人の中には、海外に居住する人や所在不明の人などがいるようなことも決して珍しいことではないからです。

また、相続財産の帰属先がおおむね決まったとしても、その配分で相続人の一人でも納得しない人がいる場合には、全員の印鑑が揃わないということで、家事調停や審判などの法律的な解決方法が必要となり、更に手続きの長期化が予想されるのです。

■分ける財産は何か

名義変更に、実印や印鑑証明書の入手という面倒な手続が必要であったとしても、最終的にはそれらの財産を現金化することで、相続人に配分することは可能になります。

しかし、相続財産の中でも、現実問題としては、容易に配分することができない財産というものがあります。それは、父親が残した自宅です。自宅を誰かが相続する場合、一般的には死亡した夫の配偶者に名義変更される場合が多いと思われます。しかし、自宅以外にめぼしい財産がないというような場合でも、子供たちにも一定の割合で相続する権利がある以上、求められれば、自宅の所有権を配分してあげなければなりません。

そこで、親子でもめるのもみっともないので、自宅の名義を配偶者二分の一、子供達二人の場合には四分の一ずつを分けるというようなことで対処してしまうケースが出てくるのです。

しかし、子供の一人がその家に母親と住み続ける場合を考えてみればわかることですが、もう一人の子供は、その家に住まずに権利だけ持っている状態になり、相続に際して財産をもらったのに何のメリットもない結果になってしまいます。

■分けやすくする

自宅以外に分けてあげられるものがないような場合、現実的な対応のひとつとして、今後母親の老後の面倒を見る代わりに、どちらかの子供に自宅の名義を一本化するということも検討する価値があります。将来その母親も他界した場合には、改めて母親の持ち分に対する分配問題が発生するため、できることならば、もめごとの種は母親が存命中に解消しておいてあげてほしいものです。

相続問題は場合によっては、親族間にいらぬ軋轢を残すことがあります。財産を残す方は問題と思っていなくても、残された親族が将来にわたって平穏に暮らせるように、相続財産は分配しやすくしておいてあげるのが、本当の親心というものなのです。

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