どんどん相続人は増えていく

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■悩み多き高齢者

子供のいなかった叔母さんが遺した田舎の土地の相続登記をしていないが、現在では相続人が一八人にも膨れ上がってしまい、その全員とコンタクトをとることもままならないがどうすればいいのかというような相談。

長男が父親の土地の上に自宅を建てたが、長男の嫁に不動産を自由にされたくないため、父親にどのような遺言を書いてもらえばいいのかなど、高齢者の方は切実で具体的な悩みを持っておられます。

いちばんの問題は、切実な悩みを持ちながらも、高齢者には行動力が伴わないのと、自分の面倒を子供に見てもらいたいとの思いからか、その悩みを子供に相談し辛く、解決するための具体的な行動に移す決断ができないことが多いのです。

先の例では、このまま相続登記を実行に移さなければ、次の世代に問題が先送りされ、相続人は現在の18人から、20人、30人とどんどん増殖することになります。

この相談者の叔母さんが亡くなられた時点で、専門家に相談し、手続きを依頼していれば、こんな事態にはならなかったでしょう。相続人を特定し、遺産分割協議書を作成し、相続登記を完了させていたはずです。

問題を先送りしていると、より問題が複雑化するという典型的な例です。

もちろん、今からでも相続登記にチャレンジすることは可能です。しかし、高齢者が自ら決断し、相続登記の手続きを専門家に依頼すること自体がご本にだけでは決めかねるため、結局解決せずじまいになってしまう可能性は高いでしょう。

■老いては子に従う

高齢者は自身の相続財産をどう引き継がせるかについての悩みを持ってはいても、それを具体的に決める決断ができないということではないでしょうか。

老いては子に従う。高齢者が今回のようなセミナーに関心を持つものの、やはり最後は自分の最期を看取ってくれる子供たちに相談することなくして何もできないということでしょう。

さらに、高齢者の方々は今回のセミナーで聞いてきた話を、子供たちに伝えることも恐らくしていないでしょう。

また、今回の相談者六名の方の半数が、以前の相続に関して、相続手続を完了していないという結果でしたが、案外これは氷山の一角のような気がします。日本中に、恐ろしい数の相続登記未完了の不動産が埋もれているかもしれません。

今回のセミナーのフォローを通じて見えてきたことは、相続に関心を持っていても、高齢者に対していくらメッセージを発信してもご本人は決断できないということです。

つまり、相続問題は相続によって財産を受ける側にメッセージを発信し、彼らに具体的な行動を促すことが重要であるということです。

親が七十歳以上の方々である四十歳から五十歳代の方々に積極的なメッセージを送ることが問題解決の糸口になるような気がします。

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